逆・裏・対偶と証明¶
1つの命題 \(p \Rightarrow q\) からは、逆・裏・対偶の3つの命題が作れます。このうち対偶はもとの命題といつでも真偽が一致し、証明の強力な道具になります。
1. 3つの作り方¶
| 名前 | 形 | 作り方 |
|---|---|---|
| もとの命題 | \(p \Rightarrow q\) | — |
| 逆 | \(q \Rightarrow p\) | 入れかえる |
| 裏 | \(\overline{p} \Rightarrow \overline{q}\) | 両方を否定する |
| 対偶 | \(\overline{q} \Rightarrow \overline{p}\) | 入れかえて否定する |
真偽の関係
- もとの命題と対偶は、真偽がつねに一致する
- 逆と裏も、たがいに対偶の関係なので真偽が一致する
- もとの命題が真でも、逆や裏が真とは限らない
下のラボで条件を入れかえると、4つの真偽と反例が表になって出ます。もとの命題と対偶の行(色つき)がいつも同じ真偽になることを確かめましょう。
例題1¶
命題「\(x=2 \Rightarrow x^2=4\)」(\(x\) は実数)の逆・裏・対偶を書き、それぞれの真偽を答えなさい。
解説
- 逆:\(x^2=4 \Rightarrow x=2\) … 偽(反例 \(x=-2\))
- 裏:\(x \neq 2 \Rightarrow x^2 \neq 4\) … 偽(反例 \(x=-2\))
- 対偶:\(x^2 \neq 4 \Rightarrow x \neq 2\) … 真
もとの命題が真なので、対偶も真。逆と裏はどちらも偽で、真偽が一致しています。
2. なぜ対偶は一致するのか¶
集合で考えます。\(p \Rightarrow q\) が真とは \(P \subset Q\) のことでした。
\(Q\) の外側にいる要素は、\(P\) の中にいることができません(もし \(P\) の中なら \(Q\) の中にも入るはずだから)。これはまさに \(\overline{Q} \subset \overline{P}\)、つまり \(\overline{q} \Rightarrow \overline{p}\) です。
3. 対偶を利用した証明¶
「直接示しにくいときは対偶を示す」— これが対偶の一番の使い道です。
例題2¶
\(n\) を整数とする。「\(n^2\) が偶数ならば \(n\) は偶数である」を証明しなさい。
解説
直接示そうとすると、\(n^2\) が偶数という情報から \(n\) を取り出すのが大変です。そこで対偶を示します。
対偶:「\(n\) が奇数ならば \(n^2\) は奇数である」
\(n\) が奇数のとき、整数 \(k\) を用いて \(n=2k+1\) と書けるので
\(2k^2+2k\) は整数だから \(n^2\) は奇数。よって対偶は真であり、もとの命題も真である。 \(\blacksquare\)
対偶を使う合図
「〜でない」「〜とは限らない」といった否定が結論にあるときや、 仮定が扱いにくく結論のほうが式にしやすいときは、対偶を疑いましょう。
例題3¶
\(m,\,n\) を整数とする。「\(mn\) が奇数ならば、\(m\) と \(n\) はともに奇数である」を証明しなさい。
解説
対偶は「\(m\) または \(n\) が偶数ならば、\(mn\) は偶数である」。(「ともに奇数」の否定は、ド・モルガンより「少なくとも一方が偶数」)
\(m\) が偶数のとき \(m=2k\)(\(k\) は整数)と書けるので \(mn=2kn\) となり偶数。 \(n\) が偶数のときも同様に \(mn\) は偶数。
よって対偶は真だから、もとの命題も真である。 \(\blacksquare\)
4. 背理法¶
背理法
結論を否定して矛盾を導くことで、もとの命題が正しいと示す方法。
例題4¶
\(\sqrt{2}\) が無理数であることを証明しなさい。
解説
\(\sqrt2\) が有理数であると仮定する。すると、互いに素な自然数 \(m,\,n\) を用いて
と書ける。右辺は偶数なので \(m^2\) は偶数、例題2より \(m\) も偶数。そこで \(m=2k\) とおくと
同じ理由で \(n\) も偶数。すると \(m,\,n\) がともに \(2\) で割り切れることになり、 「互いに素」という仮定に矛盾する。
よって \(\sqrt2\) は有理数ではない、すなわち無理数である。 \(\blacksquare\)
対偶証明と背理法は別もの
- 対偶証明:\(\overline{q} \Rightarrow \overline{p}\) を示す(矛盾は使わない)
- 背理法:「\(p\) かつ \(\overline{q}\)」を仮定して矛盾を導く
どちらも「否定から出発する」点は同じですが、書き出しが違います。答案では最初に 「〜と仮定すると」(背理法)、「対偶を示す」(対偶証明)とはっきり宣言しましょう。
例題5¶
\(a\) を有理数、\(b\) を無理数とするとき、\(a+b\) が無理数であることを証明しなさい。
解説
\(a+b\) が有理数であると仮定し、\(a+b=r\)(\(r\) は有理数)とおく。すると
有理数どうしの差は有理数だから、\(b\) は有理数となる。これは \(b\) が無理数であることに矛盾する。
よって \(a+b\) は無理数である。 \(\blacksquare\)
練習問題¶
- 命題「\(x>3 \Rightarrow x>1\)」(\(x\) は実数)の逆・裏・対偶を書き、真偽を答えなさい。
- 命題「\(n\) が \(6\) の倍数ならば \(n\) は \(3\) の倍数である」の対偶を書きなさい。
- もとの命題が偽のとき、その対偶の真偽は何ですか。
- 「\(x^2+y^2=0 \Rightarrow x=0\) かつ \(y=0\)」(\(x,\,y\) は実数)の対偶を書きなさい。
- \(n\) を整数とする。「\(n^2\) が \(3\) の倍数ならば \(n\) は \(3\) の倍数である」を対偶を用いて証明しなさい。
- \(\sqrt3\) が無理数であることを用いて、\(2+\sqrt3\) が無理数であることを証明しなさい。
- 命題「\(p \Rightarrow q\)」が真で、その逆も真であるとき、\(p\) と \(q\) の関係を何といいますか。
答えと解説
1. もとの命題は真。
- 逆:\(x>1 \Rightarrow x>3\) … 偽(反例 \(x=2\))
- 裏:\(x \leqq 3 \Rightarrow x \leqq 1\) … 偽(反例 \(x=2\))
- 対偶:\(x \leqq 1 \Rightarrow x \leqq 3\) … 真
2. 「\(n\) が \(3\) の倍数でないならば、\(n\) は \(6\) の倍数でない」
3. 偽。真偽はつねに一致するので、もとが偽なら対偶も偽です。
4. 「\(x \neq 0\) または \(y \neq 0\) ならば \(x^2+y^2 \neq 0\)」(「かつ」の否定は「または」)
5. 対偶「\(n\) が \(3\) の倍数でなければ \(n^2\) も \(3\) の倍数でない」を示す。 \(n=3k\pm1\)(\(k\) は整数)と書けるので
となり、\(3\) で割ると \(1\) 余る。よって \(n^2\) は \(3\) の倍数でない。対偶が真だから、もとの命題も真。
6. \(2+\sqrt3\) が有理数 \(r\) であると仮定すると \(\sqrt3=r-2\)。 有理数どうしの差は有理数なので \(\sqrt3\) が有理数となり、矛盾。よって \(2+\sqrt3\) は無理数。
7. 必要十分条件(\(p \Leftrightarrow q\)、同値)。
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