メンデルの遺伝法則¶
親の形質が子に伝わるとき、そこには規則性があります。1865年、メンデルはエンドウを使って数万個の種子を数え、その規則性を初めて数で示しました。
「なぜ子では消えた形質が、孫で復活するのか」を、3Dで確かめましょう。
このラボでできること¶
- 減数分裂 — 対になった遺伝子が分かれ、生殖細胞に1つずつ入るようすを見る
- かけ合わせ — 親の遺伝子型を選ぶと、4つのマスと比がその場で出る
- 3世代 — 親(P)→ 子(F1)→ 孫(F2)の変化を追う
- メンデルの実験 — 実際に数えた5474個と1850個を、理論値とくらべる
- 問題演習 — 6問。解き方の手順とひっかかりやすい点つき
① ことばの整理¶
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 形質 | 生物の姿・形・性質 |
| 対立形質 | 同時には現れない、対になった2つの形質(丸としわなど) |
| 純系 | 代々同じ形質が現れる系統。遺伝子は \(\mathrm{AA}\) か \(\mathrm{aa}\) |
| 顕性形質 | 子(F1)に現れるほうの形質 |
| 潜性形質 | 子には現れず、孫(F2)で再び現れるほうの形質 |
「優性・劣性」から「顕性・潜性」へ
以前は「優性・劣性」と呼ばれていましたが、「劣っている」という誤解をさけるため、現在の教科書では顕性・潜性を使います。意味は同じです。
② 分離の法則¶
生殖細胞をつくる減数分裂では、対になっている遺伝子が分かれて、別々の生殖細胞に入ります。これが分離の法則です。
- \(\mathrm{AA}\) の個体 → \(\mathrm{A}\) をもつ生殖細胞だけ(1種類)
- \(\mathrm{aa}\) の個体 → \(\mathrm{a}\) をもつ生殖細胞だけ(1種類)
- \(\mathrm{Aa}\) の個体 → \(\mathrm{A}\) と \(\mathrm{a}\) が 1:1(2種類)
ひっかかりやすい点
生殖細胞に入る遺伝子は1つだけです。「\(\mathrm{Aa}\)」のまま入ることはありません。また、減数分裂でできる細胞は染色体の数がもとの半分になり、受精でもとにもどります。
③ 顕性の法則と3世代¶
親(P):純系どうしをかけ合わせる。\(\mathrm{AA} \times \mathrm{aa}\)
子(F1):生殖細胞は \(\mathrm{A}\) と \(\mathrm{a}\) しかないので、すべて \(\mathrm{Aa}\)。\(\mathrm{A}\) のはたらきだけが表に出て、顕性形質だけが現れます(顕性の法則)。しわは見えなくなりますが、遺伝子 \(\mathrm{a}\) は残っています。
孫(F2):F1どうし(\(\mathrm{Aa} \times \mathrm{Aa}\))をかけ合わせます。
| \(\mathrm{A}\) | \(\mathrm{a}\) | |
|---|---|---|
| \(\mathrm{A}\) | \(\mathrm{AA}\)(丸) | \(\mathrm{Aa}\)(丸) |
| \(\mathrm{a}\) | \(\mathrm{Aa}\)(丸) | \(\mathrm{aa}\)(しわ) |
- 遺伝子型の比:\(\mathrm{AA} : \mathrm{Aa} : \mathrm{aa} = 1 : 2 : 1\)
- 形質の比:丸 : しわ \(= 3 : 1\)
ひっかかりやすい点
遺伝子型の比(1:2:1)と形質の比(3:1)は別ものです。\(\mathrm{AA}\) と \(\mathrm{Aa}\) は見た目が同じなので、形質で数えると3:1になります。問題文がどちらを聞いているか確認しましょう。
また \(\mathrm{Aa}\) と \(\mathrm{aA}\) は同じものです。分けて数えると 1:1:1:1 になってしまいます。
④ 検定交雑¶
見た目が「丸」でも、遺伝子型は \(\mathrm{AA}\) か \(\mathrm{Aa}\) の2通りあります。これを見分けるには、潜性の純系(\(\mathrm{aa}\))をかけ合わせます。
- 結果がすべて丸 → もとの個体は \(\mathrm{AA}\)
- 結果が丸:しわ=1:1 → もとの個体は \(\mathrm{Aa}\)
しわ(\(\mathrm{aa}\))が出るには両親から \(\mathrm{a}\) をもらう必要があるので、しわが出た時点で相手も \(\mathrm{a}\) をもっていると分かります。
⑤ メンデルの実験¶
メンデルが孫(F2)の種子を実際に数えた結果です。
| 丸 | しわ | 合計 | |
|---|---|---|---|
| 実際に数えた数 | 5474 | 1850 | 7324 |
| 3:1 からの予想 | 5493 | 1831 | 7324 |
実測比は \(5474 \div 1850 \fallingdotseq 2.96\) で、理論値の \(3\) にとても近い値です。
なぜエンドウだったのか
育てやすく1年で世代が変わること、対立形質がはっきり分かれること、ふつうは自家受粉するので純系をつくりやすいこと。これらの条件がそろっていたため、規則性を見つけられました。メンデルは7つの対立形質について調べています。
なぜぴったり3:1にならないのか
3:1は確率です。さいころを6回ふっても1が1回とは限らないのと同じで、数が少ないほどずれます。メンデルは7千個以上を数えたので、理論値に近づきました。
⑥ 個数を求める問題の解き方¶
\(\mathrm{Aa} \times \mathrm{Aa}\) で種子が全部で800個できたとき、しわの種子は何個か。
- 形質の比は 丸:しわ \(= 3 : 1\)
- 全体を \(3 + 1 = 4\) つに分ける
- \(800 \div 4 \times 1 = 200\) 個
ひっかかりやすい点
「3:1」なので分母は \(3\) ではなく \(4\) です。\(800 \div 3\) としないよう注意しましょう。
次に進む前のチェック
「子(F1)では消えたしわが、なぜ孫(F2)で復活するのか」を説明できたら合格です。F1は \(\mathrm{Aa}\) で \(\mathrm{a}\) をもっており、分離の法則で \(\mathrm{a}\) をもつ生殖細胞ができ、それどうしが受精すると \(\mathrm{aa}\) になるからです。