必要条件と十分条件¶
言葉が似ていて混乱しやすい単元ですが、ベン図の大小として見れば迷いません。「小さいほうが十分、大きいほうが必要」です。
1. 定義¶
必要条件・十分条件
命題 \(p \Rightarrow q\) が真であるとき、
- \(p\) は \(q\) であるための十分条件
- \(q\) は \(p\) であるための必要条件
\(p \Rightarrow q\) と \(q \Rightarrow p\) の両方が真のとき、\(p\) は \(q\) であるための必要十分条件といい、\(p \Leftrightarrow q\) と書きます。
覚え方:矢印の先が「必要」、根元が「十分」
「ジュウブン → ヒツヨウ」の向きに矢印が進む、と覚えます。
2. 集合で見ると一目でわかる¶
\(p \Rightarrow q\) が真 ⟺ \(P \subset Q\)。つまり小さい集合のほうが十分条件です。
| 関係 | 図 | 呼び方 |
|---|---|---|
| \(P \subsetneq Q\) | \(P\) が \(Q\) の内側 | \(p\) は \(q\) の十分条件(必要ではない) |
| \(Q \subsetneq P\) | \(Q\) が \(P\) の内側 | \(p\) は \(q\) の必要条件(十分ではない) |
| \(P = Q\) | ぴったり重なる | \(p\) は \(q\) の必要十分条件 |
| それ以外 | はみ出し合う | どちらでもない |
「十分=強い条件」と覚えるとよい
\(4\) の倍数は偶数です。\(4\) の倍数であることは、偶数であるために十分すぎる強い条件。 逆に偶数であることは、\(4\) の倍数であるために最低限必要な条件(ただしそれだけでは足りない)。
下のラボで \(p,\,q\) を選ぶと、包含関係・反例・呼び名がそのまま表示されます。組を入れかえて、呼び名が逆になることを確かめてください。
3. 判定の手順¶
3ステップ
- \(p \Rightarrow q\) を調べる(偽なら反例を探す)
- \(q \Rightarrow p\) を調べる(偽なら反例を探す)
- 表にあてはめて答える
| \(p \Rightarrow q\) | \(q \Rightarrow p\) | 答え |
|---|---|---|
| 真 | 偽 | \(p\) は \(q\) であるための十分条件(必要ではない) |
| 偽 | 真 | \(p\) は \(q\) であるための必要条件(十分ではない) |
| 真 | 真 | 必要十分条件 |
| 偽 | 偽 | 必要条件でも十分条件でもない |
例題1¶
\(x\) を実数とする。\(x=3\) は \(x^2=9\) であるための何条件か。
解説
\(P=\{3\}\)、\(Q=\{3,\,-3\}\)。
- \(x=3 \Rightarrow x^2=9\):真
- \(x^2=9 \Rightarrow x=3\):偽(反例 \(x=-3\))
よって \(x=3\) は \(x^2=9\) であるための十分条件(必要ではない)。
例題2¶
\(x\) を実数とする。\(x^2>0\) は \(x \neq 0\) であるための何条件か。
解説
実数では \(x^2>0 \iff x \neq 0\) です。
- \(x^2>0 \Rightarrow x \neq 0\):真
- \(x \neq 0 \Rightarrow x^2>0\):真
両方真なので必要十分条件。真理集合が \(P=Q=\{x \mid x \neq 0\}\) と一致しています。
例題3¶
\(\triangle ABC\) について、「正三角形である」は「二等辺三角形である」ための何条件か。
解説
正三角形は必ず二等辺三角形ですが、二等辺三角形は正三角形とは限りません(反例:\(3,3,4\) の三角形)。
よって「正三角形である」は「二等辺三角形である」ための十分条件(必要ではない)。 集合で見ると、正三角形の集合が二等辺三角形の集合の内側に入っています。
例題4¶
\(x,\,y\) を実数とする。「\(x+y>0\)」は「\(x>0\) かつ \(y>0\)」であるための何条件か。
解説
- \(x+y>0 \Rightarrow x>0\) かつ \(y>0\):偽(反例 \(x=5,\,y=-1\))
- \(x>0\) かつ \(y>0 \Rightarrow x+y>0\):真
よって「\(x+y>0\)」は必要条件(十分ではない)。
「かつ」でしぼった条件のほうが集合は小さくなる、と考えると向きを間違えません。
4. よく出る組み合わせ¶
| \(p\) | \(q\) | \(p\) は \(q\) の |
|---|---|---|
| \(x=2\) | \(x^2=4\) | 十分条件 |
| \(\lvert x \rvert<1\) | \(x<1\) | 十分条件 |
| \(x\) は実数 | \(x\) は有理数 | 必要条件 |
| \(x\) は \(6\) の倍数 | \(x\) は \(2\) の倍数かつ \(3\) の倍数 | 必要十分条件 |
| \(x>0\) | \(x\) は整数 | どちらでもない |
迷ったら具体例を1つ作る
反例が1つ見つかれば、その向きの矢印は切れます。 \(x=-1,\,0,\,\tfrac12,\,2\) のような「よく効く値」をいくつか用意しておくと速く判定できます。
練習問題¶
\(x,\,y\) は実数、\(n\) は整数とします。次の空欄にあてはまる語句を「十分条件(必要ではない)/必要条件(十分ではない)/必要十分条件/どちらでもない」から選びなさい。
- \(x=-1\) は \(x^2=1\) であるための( )。
- \(n\) が \(4\) の倍数であることは、\(n\) が偶数であるための( )。
- \(x>1\) は \(x>0\) であるための( )。
- \(x^2=y^2\) は \(x=y\) であるための( )。
- \(xy=0\) は \(x=0\) または \(y=0\) であるための( )。
- \(x\) が有理数であることは、\(x\) が実数であるための( )。
- \(x+y=2\) かつ \(xy=1\) は、\(x=y=1\) であるための( )。
答えと解説
1. 十分条件(必要ではない)。\(x=-1 \Rightarrow x^2=1\) は真、逆は \(x=1\) が反例。
2. 十分条件(必要ではない)。\(4\) の倍数の集合は偶数の集合の内側。逆は \(n=2\) が反例。
3. 十分条件(必要ではない)。逆は \(x=0.5\) が反例。
4. 必要条件(十分ではない)。\(x=y \Rightarrow x^2=y^2\) は真ですが、逆は \(x=1,\,y=-1\) が反例。
5. 必要十分条件。実数では「積が \(0\) ⟺ どちらかが \(0\)」。
6. 十分条件(必要ではない)。有理数はすべて実数、逆は \(\sqrt2\) が反例。
7. 必要十分条件。\(x,\,y\) は \(t^2-2t+1=0\) の解なので \(t=1\)(重解)、つまり \(x=y=1\)。逆も明らかに成り立ちます。
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- 4. 逆・裏・対偶と証明 — 対偶を使うと証明がぐっと楽になる
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