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命題と条件

数学の文には「正しいか正しくないかが決まるもの」と「決まらないもの」があります。前者を命題といい、集合の言葉を使って真偽を判定します。

1. 命題とは

命題

正しい(真)か正しくない(偽)かが、はっきり決まる文や式を命題という。

文 命題か 理由
\(2\) は素数である ○(真) 正しいと決まる
\(3 > 5\) ○(偽) 正しくないと決まる
\(x+1=5\) × \(x\) が決まらないと真偽が決まらない
数学は楽しい × 人によって変わる

\(x+1=5\) のように、文字の値によって真偽が変わる文を、命題と区別して条件といいます。

条件と真理集合

条件 \(p\) を満たすものを全部集めた集合を、\(p\) の真理集合といい \(P\) と書きます。

\[p:\ x \text{ は } 4 \text{ の倍数} \quad (U=\{1,2,\dots,12\}) \qquad\Longrightarrow\qquad P=\{4,\,8,\,12\}\]

条件は集合に、命題は包含関係に翻訳できる

この「条件 → 集合」の翻訳ができると、あとの必要条件・十分条件がすべてベン図の問題になります。

例題1

次のうち命題であるものを選び、命題であるものはその真偽を答えなさい。

(ア)\(\sqrt{9}=3\) (イ)\(x^2=4\) (ウ)\(1\) は素数である (エ)この本は厚い

解説

(ア)命題で真。(ウ)命題で偽(素数は \(1\) より大きい約数が \(1\) と自分自身だけの数なので \(1\) は素数ではない)。

(イ)は \(x\) の値で変わるので条件、(エ)は基準があいまいなので命題ではありません。

2. 「\(p \Rightarrow q\)」の真偽

条件 \(p,\,q\) について、「\(p\) ならば \(q\)」を \(p \Rightarrow q\) と書きます。

真偽の判定

\(p\) を満たすものがすべて \(q\) を満たすとき \(p \Rightarrow q\) は真。 集合の言葉では \(P \subset Q\)。

\(p\) を満たすのに \(q\) を満たさないものが1つでもあれば偽。その1つを反例という。

反例は「1つ」示せば十分

偽であることを示すのに、たくさん例を挙げる必要はありません。反例を1つ挙げれば終わりです。 逆に真であることを示すには、「すべてについて」の説明が必要で、例をいくつ挙げても証明にはなりません。

下のラボで \(p,\,q\) を選ぶと、\(P\) が \(Q\) からはみ出した要素(=反例)が赤く表示されます。

例題2

次の命題の真偽を調べ、偽ならば反例を1つ挙げなさい。ただし \(x\) は実数とします。

(ア)\(x=2 \Rightarrow x^2=4\) (イ)\(x^2=4 \Rightarrow x=2\)

解説

(ア)真。\(P=\{2\}\)、\(Q=\{2,\,-2\}\) で \(P \subset Q\)。

(イ)偽。反例は \(x=-2\)(\(x^2=4\) を満たすが \(x=2\) ではない)。

同じ2つの条件でも、矢印の向きが変わると真偽は変わります。

3. 条件の否定

条件 \(p\) に対し、「\(p\) でない」を否定といい \(\overline{p}\) と書きます。真理集合は \(\overline{P}\) です。

\(p\) \(\overline{p}\)
\(x=3\) \(x \neq 3\)
\(x > 3\) \(x \leqq 3\)
\(x\) は偶数 \(x\) は奇数
\(x\) は \(3\) かつ \(5\) の倍数 \(x\) は \(3\) の倍数でない または \(5\) の倍数でない

\(x>3\) の否定は \(x<3\) ではない

\(x=3\) の場合を忘れないこと。否定は「残り全部」なので \(x \leqq 3\) です。 数直線をかいて、塗られていない側を確かめる習慣をつけましょう。

「かつ」「または」の否定(ド・モルガン)

条件のド・モルガンの法則

\[\overline{p \text{ かつ } q} \;=\; \overline{p} \text{ または } \overline{q}, \qquad \overline{p \text{ または } q} \;=\; \overline{p} \text{ かつ } \overline{q}\]

否定すると「かつ」と「または」が入れかわります。集合のド・モルガンの法則と同じ形です。

例題3

\(x\) を実数とするとき、条件「\(x>1\) かつ \(x<5\)」の否定を答えなさい。

解説

ド・モルガンより「\(x \leqq 1\) または \(x \geqq 5\)」。

もとの条件は \(1<x<5\) という区間でした。その否定は、数直線でその区間の外側2つです。 「かつ」で1つの区間だったものが、否定すると「または」で2つに分かれます。

4. 「すべて」と「ある」の否定

  • すべての \(x\) について \(p\)(全部そうだ)
  • ある \(x\) について \(p\)(少なくとも1つそうだ)

否定のきまり

「すべての \(x\) について \(p\)」の否定 → 「ある \(x\) について \(\overline{p}\)」

「ある \(x\) について \(p\)」の否定 → 「すべての \(x\) について \(\overline{p}\)」

「すべて」の否定が「すべて〜でない」ではないことに注意します。1つでも例外があれば「すべて」は崩れるからです。

例題4

次の否定を書きなさい。

(ア)すべての実数 \(x\) について \(x^2 \geqq 0\) (イ)ある自然数 \(n\) について \(n^2=10\)

解説

(ア)ある実数 \(x\) について \(x^2<0\)。(もとの命題は真なので、この否定は偽です)

(イ)すべての自然数 \(n\) について \(n^2 \neq 10\)。(もとの命題は偽なので、この否定は真です)

練習問題

  1. 次のうち命題はどれですか。(ア)\(5\) は \(10\) の約数である (イ)\(2x=6\) (ウ)\(\sqrt{2}\) は無理数である
  2. \(U=\{1,2,\dots,10\}\) で、条件 \(p\):\(x\) は \(3\) の倍数、\(q\):\(x\) は奇数 の真理集合 \(P,\,Q\) を書きなさい。
  3. 2 の \(p,\,q\) について、\(p \Rightarrow q\) の真偽を調べ、偽なら反例を挙げなさい。
  4. \(x\) を実数とするとき、条件「\(x \geqq -2\)」の否定を書きなさい。
  5. 条件「\(x\) は \(2\) の倍数 または \(x\) は \(3\) の倍数」の否定を書きなさい。
  6. 命題「\(x>2 \Rightarrow x>0\)」の真偽を調べなさい。また、その逆の真偽も調べなさい。
  7. 「ある実数 \(x\) について \(x^2+1=0\)」の否定を書き、どちらが真か答えなさい。
答えと解説

1. (ア)と(ウ)。(ア)は真、(ウ)も真。(イ)は \(x\) の値で変わるので条件です。

2. \(P=\{3,\,6,\,9\}\)、\(Q=\{1,3,5,7,9\}\)

3. 偽。反例は \(x=6\)(\(3\) の倍数だが奇数ではない)。ベン図では \(6\) が \(P\) からはみ出します。

4. \(x<-2\)

5. 「\(x\) は \(2\) の倍数でない かつ \(x\) は \(3\) の倍数でない」

6. \(P=\{x \mid x>2\}\)、\(Q=\{x \mid x>0\}\) で \(P \subset Q\) だから真。 逆「\(x>0 \Rightarrow x>2\)」は \(x=1\) が反例で偽。

7. 否定は「すべての実数 \(x\) について \(x^2+1 \neq 0\)」。 実数の \(2\) 乗は \(0\) 以上なので \(x^2+1 \geqq 1>0\)。よって否定のほうが真です。

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