二項定理¶
この単元で学ぶこと¶
\((a+b)^n\) を展開するとき、\(n\) が大きいと地道に掛け算するのは大変です。
二項定理を使えば、どんな \(n\) に対しても展開の各項の係数をすばやく求められます。
ステップ0:まず手を動かして確認しよう¶
小さい \(n\) の場合を実際に展開して、係数のパターンを観察しましょう。
各展開式の係数だけを取り出して三角形に並べると、次のような規則的な図が現れます。
これをパスカルの三角形といいます。各数は左上と右上の数の和になっています。
パスカルの三角形の規則
各数 \(=\) 左上の数 \(+\) 右上の数
しかし「\(n=10\) のとき」など \(n\) が大きくなると、パスカルの三角形を \(10\) 行書くのは手間です。
この係数を組み合わせ(二項係数)で表す方法を学びましょう。
ステップ1:二項係数(組み合わせ)の復習¶
組み合わせの定義¶
\(n\) 個のものから \(r\) 個を選ぶ選び方の数を \(\binom{n}{r}\)(または \({}_n\mathrm{C}_r\))と書き、次の式で求めます。
ここで \(n! = n \times (n-1) \times \cdots \times 2 \times 1\)(\(n\) の階乗)、\(0! = 1\) と定めます。
具体的な計算¶
\(n=4\) の展開 \(a^4 + 4a^3b + 6a^2b^2 + 4ab^3 + b^4\) の係数 \(1,4,6,4,1\) と一致していますね!
重要な性質¶
ステップ2:なぜ係数が \({}_n\mathrm{C}_r\) になるのか¶
\((a+b)^n\) を展開するとき、\(n\) 個の因数 \((a+b)\) それぞれから \(a\) か \(b\) かを 1 つ選んで掛け合わせます。
\(a^{n-r}b^r\) という項は、「\(n\) 個の \((a+b)\) のうち \(r\) 個から \(b\) を選び、残り \(n-r\) 個から \(a\) を選ぶ」場合に対応します。
\(r\) 個の \(b\) を選ぶ方法は \(\binom{n}{r}\) 通りあるので、\(a^{n-r}b^r\) の係数は \(\binom{n}{r}\) になります。
イメージ
\((a+b)^3 = (a+b)(a+b)(a+b)\) の展開で \(ab^2\) の項を考える。
3 個の \((a+b)\) のうち どの 2 個から \(b\) を選ぶか が \(\binom{3}{2}=3\) 通り。
だから \(ab^2\) の係数は 3。
ステップ3:二項定理の公式¶
二項定理¶
展開して書くと、
一般項(第 \(r+1\) 項)¶
展開式の 第 \(r+1\) 項(\(r = 0, 1, 2, \ldots, n\))は次の式で表されます。
インデックスに注意
\(r=0\) のとき第 1 項、\(r=1\) のとき第 2 項、…となります。
「第 \(k\) 項」と聞かれたら \(r = k-1\) として代入します。
ステップ4:例題で使い方を身につけよう¶
例題1:展開する¶
\((x + 2)^5\) を展開せよ。
解答
二項定理で \(a=x,\ b=2,\ n=5\) とおく。
各項を計算する。
| \(r\) | \(\binom{5}{r}\) | \(x^{5-r}\) | \(2^r\) | 項 |
|---|---|---|---|---|
| 0 | 1 | \(x^5\) | 1 | \(x^5\) |
| 1 | 5 | \(x^4\) | 2 | \(10x^4\) |
| 2 | 10 | \(x^3\) | 4 | \(40x^3\) |
| 3 | 10 | \(x^2\) | 8 | \(80x^2\) |
| 4 | 5 | \(x\) | 16 | \(80x\) |
| 5 | 1 | 1 | 32 | \(32\) |
例題2:特定の項の係数を求める¶
\((3x - y)^6\) の展開式における \(x^4y^2\) の係数を求めよ。
解答
\(a = 3x,\ b = -y,\ n = 6\) とおく。
一般項は、
\(x^4y^2\) になるのは \(6-r=4\)、つまり \(r=2\) のとき。
答え:\(x^4y^2\) の係数は \(1215\)
解き方の手順
- 一般項 \(T_{r+1}\) を書く
- 求めたい \(x\), \(y\) の指数から \(r\) を決める
- \(r\) を代入して係数を計算する
例題3:定数項を求める¶
\(\left(x^2 + \dfrac{1}{x}\right)^9\) の展開式における定数項を求めよ。
解答
\(a = x^2,\ b = \dfrac{1}{x},\ n = 9\) とおく。
一般項は、
定数項は \(x\) の指数が \(0\) になるときなので、
答え:定数項は \(84\)
よくあるミス
\(x\) の指数が \(2(9-r)\) と \(-r\) の 2 つある ことに注意。まとめてから \(= 0\) とおく。
例題4:二項定理の応用(数値の計算)¶
\(1.02^{10}\) の近似値を、二項定理を使って小数第 3 位まで求めよ。
ただし \(\binom{10}{2} = 45\)、\(\binom{10}{3} = 120\) を用いよ。
解答
\(1.02 = 1 + 0.02\) とみて、\(a=1,\ b=0.02,\ n=10\) として二項定理を適用する。
\(r \geq 3\) の項は \((0.02)^3 = 0.000008\) 以下となり、小数第 4 位以下に影響するので無視する。
答え:\(1.02^{10} \approx 1.218\)
練習問題¶
問1¶
\((a + 3b)^4\) を展開せよ。
解答
\(n=4,\ a=a,\ b=3b\) として二項定理を適用する。
| \(r\) | \(\binom{4}{r}\) | \(3^r\) | 項 |
|---|---|---|---|
| 0 | 1 | 1 | \(a^4\) |
| 1 | 4 | 3 | \(12a^3b\) |
| 2 | 6 | 9 | \(54a^2b^2\) |
| 3 | 4 | 27 | \(108ab^3\) |
| 4 | 1 | 81 | \(81b^4\) |
問2¶
\((2x - 1)^7\) の展開式における \(x^3\) の係数を求めよ。
解答
\(a=2x,\ b=-1,\ n=7\) として一般項を書く。
\(x^3\) になるのは \(7-r=3\)、つまり \(r=4\) のとき。
答え:\(x^3\) の係数は \(280\)
問3¶
\(\left(x - \dfrac{2}{x^2}\right)^9\) の展開式における定数項を求めよ。
解答
\(a=x,\ b=-\dfrac{2}{x^2},\ n=9\) として一般項を書く。
定数項は \(x\) の指数が \(0\) のとき:
答え:定数項は \(-672\)
問4(発展)¶
\((1+x)^n\) の展開式において、次の等式が成り立つことを示せ。
解答
二項定理 \((a+b)^n = \displaystyle\sum_{r=0}^{n}\binom{n}{r}a^{n-r}b^r\) に \(a=1,\ b=1\) を代入する。
左辺は \(2^n\) なので、
この等式の意味
\(n\) 個のものから 0 個、1 個、…、\(n\) 個を選ぶ方法の総数は \(2^n\) 通り。
各要素について「選ぶ・選ばない」の 2 択があるので、確かに \(2^n\) 通りです。
問5(発展)¶
\((1+x)^n\) の展開式において、次の等式が成り立つことを示せ。
解答
二項定理に \(a=1,\ b=-1\) を代入する。
左辺は \(0^n = 0\)(\(n \geq 1\))なので、
まとめ¶
二項定理
第 \(r+1\) 項(一般項):
解き方の流れ
- \(a\)、\(b\)、\(n\) を確認する
- 一般項 \(T_{r+1} = \binom{n}{r}a^{n-r}b^r\) を書く
- 求めたい項の 指数の条件 から \(r\) を決める
- \(r\) を代入して係数を計算する
よくあるミス
- \(b\) に負の符号が含まれるとき \((-1)^r\) を忘れない
- \(a\) や \(b\) が \(x^2\) や \(\frac{1}{x}\) などのとき、\(x\) の指数をまとめてから条件を立てる
- 「第 \(k\) 項」は \(r = k-1\) と対応することに注意