三次式の展開¶
この単元で学ぶこと¶
中学校では \((a+b)^2\) や \((a+b)(a-b)\) などの展開公式を学びました。
高校の数学Ⅱでは、これを3 乗に拡張した展開公式を学びます。
この単元で扱う公式は次の 4 つです。
ステップ0:中学校の展開公式を復習しよう¶
高校の公式を理解するために、まず中学校で学んだ展開公式を確認しましょう。
展開とは
展開とは、カッコをはずして多項式の和の形に書き直すことです。
たとえば \((a+b)^2 = a^2 + 2ab + b^2\) は、左辺のカッコをはずして右辺の形にしています。
これらは \(2\) 乗(二次式)の展開公式でした。今回はこれを \(3\) 乗に拡張します。
ステップ1:\((a+b)^3\) を導いてみよう¶
いきなり公式を覚えるのではなく、なぜその形になるのかを理解しましょう。
\((a+b)^3\) は \((a+b)\) を 3 回掛けたものです。
まず \((a+b)^2\) を中学校の公式で計算し、それに \((a+b)\) をもう一度掛けます。
ここで丁寧に展開します。\((a^2 + 2ab + b^2)\) の各項に \((a+b)\) を掛けます。
同類項(文字が同じ項)をまとめます。
係数のパターン
展開結果 \(a^3 + 3a^2b + 3ab^2 + b^3\) の係数は \(1, 3, 3, 1\) です。
これは二項定理で学ぶパスカルの三角形の \(n=3\) の行と一致します。
ステップ2:\((a-b)^3\) を導いてみよう¶
\((a-b)^3\) は、\((a+b)^3\) の \(b\) を \(-b\) に置き換えるだけです。
各項の符号を計算します。
- \(3a^2(-b) = -3a^2b\)
- \(3a(-b)^2 = 3a \cdot b^2 = 3ab^2\) (\((-b)^2 = b^2\) なのでプラス)
- \((-b)^3 = -b^3\) (\((-b)^3 = -b^3\) なのでマイナス)
符号のミスに注意
\((a+b)^3\) と \((a-b)^3\) の違いは偶数番目の項の符号です。
| 項 | \((a+b)^3\) | \((a-b)^3\) |
|---|---|---|
| \(a^3\) の係数 | \(+1\) | \(+1\) |
| \(a^2b\) の係数 | \(+3\) | \(-3\) |
| \(ab^2\) の係数 | \(+3\) | \(+3\) |
| \(b^3\) の係数 | \(+1\) | \(-1\) |
ステップ3:和・差の立方の公式¶
ステップ1・2の結果をまとめると次の公式になります。
和・差の立方
公式の覚え方¶
- ① \(a^3\):\(a\) の 3 乗
- ② \(3a^2b\):係数 3、\(a\) は 2 乗、\(b\) は 1 乗
- ③ \(3ab^2\):係数 3、\(a\) は 1 乗、\(b\) は 2 乗
- ④ \(b^3\):\(b\) の 3 乗
\(a\) と \(b\) の指数の合計は常に \(3\) で、係数は \(1, 3, 3, 1\) の順になります。
ステップ4:\(a^3 + b^3\) と \(a^3 - b^3\) の因数分解の逆(展開)¶
次の 2 つの公式は、因数分解の公式を逆に見たものです。
展開の公式として確認しておきましょう。
\(a^3 + b^3\) 型¶
を展開してみます。
中間の項 \(-a^2b + a^2b\) と \(ab^2 - ab^2\) が打ち消し合います。
\(a^3 - b^3\) 型¶
を展開してみます。
中間の項が打ち消し合います。
立方和・立方差の公式
符号の覚え方
- \((a \boldsymbol{+} b)(\cdots) = a^3 \boldsymbol{+} b^3\) → 同じ符号
- \((a \boldsymbol{-} b)(\cdots) = a^3 \boldsymbol{-} b^3\) → 同じ符号
- カッコの中の \(ab\) の符号は、先頭の符号と逆になる
ステップ5:例題で使い方を身につけよう¶
例題1:基本的な展開¶
\((x+3)^3\) を展開せよ。
解答
公式 \((a+b)^3 = a^3 + 3a^2b + 3ab^2 + b^3\) に \(a=x,\ b=3\) を代入する。
各項を計算する。
例題2:差の展開¶
\((2x - 1)^3\) を展開せよ。
解答
公式 \((a-b)^3 = a^3 - 3a^2b + 3ab^2 - b^3\) に \(a=2x,\ b=1\) を代入する。
各項を計算する。\(( 2x)^2 = 4x^2\)、\((2x)^3 = 8x^3\) に注意。
よくあるミス
\(a = 2x\) のとき \(a^2 = (2x)^2 = 4x^2\)、\(a^3 = (2x)^3 = 8x^3\) です。
\(2x^2\) や \(2x^3\) と間違えないよう注意しましょう。
例題3:和の立方(係数あり)¶
\((3a + 2b)^3\) を展開せよ。
解答
公式に \(a \to 3a,\ b \to 2b\) を代入する。
各項を計算する。
| 項 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| \((3a)^3\) | \(27a^3\) | \(27a^3\) |
| \(3(3a)^2(2b)\) | \(3 \times 9a^2 \times 2b\) | \(54a^2b\) |
| \(3(3a)(2b)^2\) | \(3 \times 3a \times 4b^2\) | \(36ab^2\) |
| \((2b)^3\) | \(8b^3\) | \(8b^3\) |
例題4:立方和・立方差の展開¶
次を展開せよ。
(1) \((x+2)(x^2 - 2x + 4)\) (2) \((3x-1)(9x^2 + 3x + 1)\)
解答
(1) \(a=x,\ b=2\) として公式 \((a+b)(a^2-ab+b^2) = a^3+b^3\) を使う。
カッコの中が \(a^2 - ab + b^2 = x^2 - 2x + 4\) になっているか確認する。
- \(a^2 = x^2\) ✓
- \(ab = x \cdot 2 = 2x\) ✓ (よって \(-ab = -2x\) ✓)
- \(b^2 = 4\) ✓
公式より、
(2) \(a=3x,\ b=1\) として公式 \((a-b)(a^2+ab+b^2) = a^3-b^3\) を使う。
- \(a^2 = (3x)^2 = 9x^2\) ✓
- \(ab = 3x \cdot 1 = 3x\) ✓
- \(b^2 = 1\) ✓
公式より、
公式を使う手順
- 公式の形 \((a+b)(a^2-ab+b^2)\) と照らし合わせて \(a,b\) を特定する
- カッコの中が \(a^2, ab, b^2\) と一致するか確認する
- 一致すれば \(a^3 + b^3\)(または \(a^3 - b^3\))と書く
例題5:組み合わせて展開¶
\((x+y+1)(x+y-1)\) を展開せよ。
解答
\(A = x+y\) とおくと、
中学校の公式 \((A+1)(A-1) = A^2 - 1\) を使う。
\((x+y)^2 = x^2 + 2xy + y^2\) を展開する。
置き換えのコツ
繰り返し現れる部分式(ここでは \(x+y\))を 1 文字に置き換えると、
中学校の公式がそのまま使えることが多い。
練習問題¶
問1¶
次の式を展開せよ。
(1) \((x+4)^3\) (2) \((x-2)^3\) (3) \((2x+3)^3\)
解答
(1) 公式 \((a+b)^3 = a^3 + 3a^2b + 3ab^2 + b^3\) に \(a=x,\ b=4\) を代入。
(2) 公式 \((a-b)^3 = a^3 - 3a^2b + 3ab^2 - b^3\) に \(a=x,\ b=2\) を代入。
(3) 公式に \(a=2x,\ b=3\) を代入。
問2¶
次の式を展開せよ。
(1) \((x-3y)^3\) (2) \(\left(a + \dfrac{1}{2}\right)^3\)
解答
(1) 公式 \((a-b)^3\) に \(a=x,\ b=3y\) を代入。
(2) 公式 \((a+b)^3\) に \(a=a,\ b=\dfrac{1}{2}\) を代入。
問3¶
次の式を展開せよ。
(1) \((x+1)(x^2 - x + 1)\) (2) \((x-3)(x^2 + 3x + 9)\) (3) \((2x+y)(4x^2 - 2xy + y^2)\)
解答
(1) 公式 \((a+b)(a^2-ab+b^2) = a^3+b^3\) で \(a=x,\ b=1\)。
(2) 公式 \((a-b)(a^2+ab+b^2) = a^3-b^3\) で \(a=x,\ b=3\)。
(3) 公式 \((a+b)(a^2-ab+b^2) = a^3+b^3\) で \(a=2x,\ b=y\)。
カッコの中を確認:\(a^2 = 4x^2\)、\(ab = 2xy\)、\(b^2 = y^2\) より \(a^2-ab+b^2 = 4x^2-2xy+y^2\) ✓
問4¶
\((x+y)^3 - (x-y)^3\) を展開・整理せよ。
解答
それぞれを公式で展開する。
差を計算する。
同類項をまとめる。
因数 \(2y\) を括り出す。
引き算の展開
\((A)^3 - (B)^3\) 型は、それぞれ別々に展開してから引き算する。
符号のミスを防ぐため、引く側をカッコでくくってから計算すると安全。
問5(発展)¶
\(x + y = 3,\ xy = 1\) のとき、\(x^3 + y^3\) の値を求めよ。
解答
公式 \((a+b)(a^2-ab+b^2) = a^3+b^3\) を変形すると、
この変形を確認する。
よって \(a^3 + b^3 = (a+b)^3 - 3ab(a+b)\) が成り立つ。
\(a=x,\ b=y\) として \(x+y=3,\ xy=1\) を代入する。
答え:\(x^3 + y^3 = 18\)
対称式の計算
\(x^3+y^3\) のように \(x\) と \(y\) を入れ替えても値が変わらない式を対称式といいます。
対称式は \(x+y\) と \(xy\) の値さえわかれば、\(x\), \(y\) を個別に求めなくても計算できます。
まとめ¶
三次式の展開公式
和・差の立方
立方和・立方差
展開の手順
- 公式の形と照らし合わせて \(a\), \(b\) を特定する
- \(a\) や \(b\) が複数の項からなる場合(例:\(a = 2x\))は、累乗の計算を忘れずに
- 展開後は同類項をまとめて整理する
よくあるミス
- \((a-b)^3\) で符号が \(+,-,+,-\) になることを忘れる
- \(a=2x\) のとき \((2x)^2 = 4x^2\)、\((2x)^3 = 8x^3\) と正しく計算する
- 立方和・立方差の公式で \(ab\) の符号を間違える
- \(a^3 + b^3\) のとき:\((a+b)(a^2 \boldsymbol{-} ab + b^2)\)(\(ab\) はマイナス)
- \(a^3 - b^3\) のとき:\((a-b)(a^2 \boldsymbol{+} ab + b^2)\)(\(ab\) はプラス)